チェッカーは頼もしい味方(?)

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翻訳者が翻訳会社に納品した成果物(翻訳文)は、翻訳会社でチェッカーと呼ばれる人達がチェックし、必要に応じて修正を行います。

 

翻訳会社は、そのようにチェッカーが修正した翻訳文を依頼主(翻訳会社に翻訳を依頼してきた会社、機関、事業体など)(ソースクライアント、などと呼ばれます)に納品します。

 

チェッカーは、翻訳会社に常駐している人もいれば、在宅翻訳者のように在宅で作業する人もいます。

原則、翻訳者はチェック内容を知る機会がない

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翻訳者は、翻訳会社が意図的にフィードバックという形でチェッカーのチェックの内容を通知しない限り、通常はチェック内容について知ることはありません。

 

あとは、翻訳者がチェック内容を知る機会と言えば、一旦、ソースクライアントに翻訳文が納品されたものの、原文をソースクライアント側で書き直した場合に、翻訳文も原文の書き直しに合わせて修正する必要がでてきた時ですかね。

 

その時は、ソースクライアントは原文の書き直しに合わせた翻訳文の修正を翻訳会社に依頼しますが、その依頼を受けた翻訳会社は、通常、最初の翻訳を手掛けた翻訳者に、訳文の修正を依頼します。そのとき、翻訳者は、書き直された原文と1回目の納品の後にチェッカーが修正した訳文を受け取ります。

 

そのため、この場合、翻訳者は自分が(1回目に)納品した翻訳文がどのように修正されたか知ることができます。

 チェッカーは頼もしい味方だが・・・

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翻訳者にとって、チェッカーは自分のミスを修正してくれる頼もしい味方、といったところなのですが、反対に、チェッカーによって翻訳者が納得できないような修正が行われてしまう場合もあります。

 

私にも以前、こんなことがありました。

 

~する恐れがある」という日本語を英語で表現するときに「threten  + to 不定詞」という言い方をすることができます。

 

一方で、動詞の「threaten」を単体で使う場合、「~を脅す」という意味になることが多いです。

例えば「He threatened the boy.」(彼はその少年を脅した)などです。

 

「threaten」は、この「~を脅す」という意味で使用されることが多く、「threaten + to 不定詞」(~する恐れがある)という用法は、言ってみればわりとマイナーな用法です。

 

しかし、この用法、ランダムハウス英語辞書にはしっかりと以下の例文付きで載っています。 

It threatens to rain.

雨がふりそうだ

 

The strike spread and thretened to engulf the nation.

ストライキは広がり、国中を巻き込む恐れがあった。  

チェッカーによる修正に納得できなかった実例

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あるとき、 翻訳の原稿に「製品に瑕疵がある場合、またはその恐れがある場合・・・」という和文がでてきたので、私は、上記の用法を利用して、「If there is or threatens to be a deficiency in the product, ...」という風に訳しました。

 

ところが、この「threten  + to 不定詞」の用法を知らなかったであろうチェッカーが、私の訳文を、英語としてとても違和感のある訳文に書き換えてしまったのです。

 

まぁ、そのチェッカーの責任において修正した内容なので、私がどうこう言うべき問題ではないのかも知れませんが、せっかく自然な英語に訳しているのに、それをわざわざ不自然な言い回しに直されるのは、心情的にはかなり厳しいものがあります。

 

辞書を引けば載っている内容なのに、そのチェッカーはそれすら怠った、ということですからねぇ。

チェッカーによる修正を目にする機会が少ないのは良いことなのかも 

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まぁ、チェッカーによる修正内容をすべて知ってしまったら、翻訳者にとっていろいろ納得ができない修正もされていることでしょうから、そうした修正内容をあまり目にする機会がない、という現在のシステムは、わりと精神的には望ましいものなのかも知れませんね。

 

あ、ちなみに上記で出てきた「製品に瑕疵がある場合、またはその恐れがある場合・・・」という和文を、もし「threten  + to 不定詞」という用法を使わずに表現するとしたら、私ならこう言います。

 

「If there is actually or potentially a deficiency in the product, ...」

 

もし、チェッカーがこういう風に修正してたとしたら、まだ納得はできたんでしょうが・・・。(了)

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