日英翻訳デビュー時のお話

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私にも日英翻訳のデビューを果たした時があり、最初に受注した日英翻訳に思いを馳せるととても複雑な気分にさせられるのですが、今回はその日英翻訳のデビュー時のことについて語っていきたいと思います。

日英翻訳へのデビューを決心

最初の日英翻訳の仕事は、翻訳者キャリア4年目に受けた仕事です。それまでは、英日翻訳専業で活動しており、英日翻訳の仕事をこなすと同時にその裏で日英翻訳の勉強を続けていました。日英翻訳を担当できるだけの力は備わったと感じていたので、英日翻訳と同時に日英翻訳のトライアルを通っていた翻訳会社に対しては、「日英翻訳も開始したいと思いますので、案件がございましたらご案内いただければ幸いです」という趣旨のメールを送り、英日翻訳のトライアルだけしか受験していなかった翻訳会社に対しては、日英翻訳のトライアルを受験させてもらえるよう連絡し、受験させてもらったりしました。

日英翻訳の初仕事の内容

そして、とうとう初めて日英翻訳を受注する日がやってきました。依頼してくれた翻訳会社さんは、本来ターゲット言語を母国語とする翻訳者以外には依頼を行わない(つまり日英翻訳は、英語を母国語とする翻訳者以外に対しては、原則依頼しない)、という原則を有していた会社です。そうした翻訳会社から日本語を母国語とする私に日英翻訳の依頼があるだけでも珍しいのに、原稿の内容も私にとってはかなり特殊なものでした。その内容は裁判書類。訳出に少なくとも3週間程度かかると見込まれる分量でした。その翻訳会社によると、通常その裁判書類シリーズは、同社のエース格の英語ネイティブ翻訳者3名で分担して訳出していたそうですが、その回はその3名とも別件の予定があったためアサインできなかったそうで、私に依頼することにしたそうです。その時は「おっ、エース格が任されるような仕事を僕に? 信頼されてるね~」と半ば得意気に、半ば呑気に引き受けたのですが、まもなく「これ、例の3名に断られて、すぐ僕のところに来たのではなく、その前に中堅どころの翻訳者に声かけまくって、全員に断られたんだろうな」、と気づくに至りました。それだけ、内容が特殊なものでした。

納期に間に合わない!!

引き受けた以上は全力でやる、と意気込んで訳出を開始したものの、内容がとても難しくて訳出が一向に進みません。そして比較的早い段階で気が付きました。「このままでは指定納期に間に合わない!」と。いや、このままでなくてももはや間に合わせることは不可能であると気づきました。目の前が真っ暗になりましたがどうすることもできず、正直に事情を話して謝るしかない、と翻訳会社に連絡しました。激怒されても仕方がない、と思っていたのですが、冷静に話しを聞いてくれ、最終的に「少し時間をください」と、ソースクライアントさんに納期の再交渉をしてくれました。ソースクライアントさんもあっさり納期の延長に応じてくださり、必要に応じてさらに延長が可能だ、とおっしゃっていただきました。(私が指定納期を守れなかったのは、後にも先にもこの1回きりです。ただし、これは何の自慢にもなりません。1回でも納期を守れなかったのは、後々まで消えることのない汚点だと思っています。)

予想外の高評価!

本当に申し訳ないという気持ちになりながらも、可能とおっしゃっていただいた2度目の納期延長だけはさせてはなるものか、と必死に訳出を進めました。フラフラになりながらも、何とか最終的には延長後の納期までに納品することができました。正直、品質についてはあまり自信がなかったのですが、翻訳会社のチェッカーさんからの評価はこうでした。「ただ字面を追って訳すのではなく、内容をキチンと把握したうえで訳されている。いつもの英語ネイティブの翻訳者さんの翻訳と比べても遜色がない」。予想外の高評価でした。リップサービスが過ぎるのでは、とちょっと思いつつも本当にうれしかったです。

後で聞いた話ですが、ソースクライアントさんも、このシリーズの翻訳の難しさは認識されていたそうで、翻訳会社さんはソースクライアントさんから「よくこんな文章を訳せますね~」と感心されていたとか。

でも思い出すと複雑な気分に

これが私の日英翻訳デビューのお話です。内容がトラウマになるほど難しかったのと、指定納期を守れなかった、という汚点が残っているため、この話に思いを馳せるととても複雑な気分になります。今まで受けた日英翻訳の中で、これが一番難しい案件だったんじゃないかな?

その後の日英翻訳

この時から私の日英翻訳の業務は開始されましたが、予想に反して、私の全翻訳における日英翻訳の割合の伸びは緩慢なものでした。もしかしたら品質がそこまで良くないと思われていたのかも知れないし、「英日翻訳者」としての印象が強く、日英翻訳に対応可能なことが取引先の翻訳会社さんにはっきりと認識されていなかったからかもしれません(表敬訪問時に、「あれ、日英翻訳もなされるんでしたっけ?」と聞かれたことも何回かあります)。それでも、日英翻訳の割合は少しずつ増えていき、ピーク時には英日2:日英8の割合くらいまで日英翻訳の比率が高まりました。最近はまた英日翻訳の割合が少し増えたような体感です。(了)

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