米大使公邸乱入事件とウィーン条約

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韓国ソウルの米大使公邸に学生17名が乱入して、1時間以上反米デモを繰り広げた、というニュースを見ました。最終的には学生は警察に連行されたようですが、そもそも大使公邸に侵入を許したことと、1時間以上違法なデモを止められなかったという警備の緩さには驚くばかりです。

各社の報道を見ると、

  • 学生ら17名が駐韓米大使公邸に不法に侵入した。
  • この学生らは、米国から出された在韓米軍駐留経費の負担増に反対しており、大使公邸前で「ハリス(米大使)は、この地を去れ」などと書かれた垂れ幕を掲げて、抗議活動を繰り広げた。
  • その後、警察当局に逮捕された。

くらいのことしか書かれていませんが、朝鮮日報オンライン(日本語版)の報道では当時の様子が詳しく書かれています↓↓

www.chosunonline.com

上記記事の一部を抜粋すると、

  • 現場警備に立っていた義務警察(兵役の代わりに警察で勤務する警察官)は、デモ隊の乱入を積極的に阻止することはなかった。
  • 警察は「はしごをむやみに取りのけた場合、乗り越えている学生らが落ちて大けがをしかねない」と主張した。
  • 警察官およそ70人がデモ隊を追って公邸に入ったが、デモ隊の中にいた男性だけを連行し、女性11人は数十分間デモするがままにしていた。
  • 「女性の体に手を出しと問題になりかねず、女性警察官の到着を待っていた」
  • 女性警察官25人が到着してデモ隊を全員連行した時刻は、塀の乗り越えが始まってから70分が過ぎた午後4時5分だった。

とあります。

これ、真面目に警備するつもりがあったんですかね? 

しかも同国では、駐韓米大使の前任者のリッパード氏も襲撃されて大けがを負ったという事件もありました。あの事件の後、本当に警備強化をしていたのか疑わしくなります。

なお、大使の公邸が、受入れ国によって保護されなければならない根拠となる条約は、「外交関係に関するウィーン条約」です。

外交関係に関するウィーン条約、すなわち「Vienna Convention on Diplomatic Relations」の第22条2項に以下の通り規定されています。

The receiving State is under a special duty to take all appropriate steps to protect the premises of the mission against any intrusion or damage and to prevent any disturbance of the peace of the mission or impairment of its dignity.

 この条項の訳は、外務省のHPによると以下のようになります。

接受国は、侵入又は損壊に対し使節団の公館を保護するため及び公館の安寧の妨害又は公館の威厳の侵害を防止するため適当なすべての措置を執る特別の責務を有する。

 韓国当局はこの規定を遵守していたか、と問われるとかなり疑わしい、と言わざるをえないと思います。(了)

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